■甑岳(標高1,301m) |
甑岳はえびの高原の北東部に位置する成層火山です。
頂を水平に切り落としたような形が「甑/蒸し器」に似ていることが名の由来と言われています。
山の東側の天然記念物の森は苔や緑が美しく、心地よい森林浴を楽しめます。
標高1,200mのえびの高原から、標高差が100m程度と手軽なので、地元で人気のトレッキングコースになっています。
■国指定天然記念物 針葉樹林帯 |
甑岳の東側のモミやツガの針葉樹林帯(約30ha)が、国の天然記念物に指定されています。
標高1,250m以上はアカマツやミズナラの林となっており、ミヤマキリシマも見られます。
明瞭な道や腐葉土の上を歩く、とても気持ちの良い森です。
【注意】
樹林帯の真ん中あたりは道が不明瞭になり、道迷いに注意が必要です。
単独の山行の場合は特に、地図・コンパス・笛等を必ず装備して、ピンクテープを見失わないように歩きましょう。慣れない方が「道に迷ったかも…」と思ったら、引き返す方が正解です。沢がありますので、滑落に注意してください。
ナツツバキ(7月下旬)
ツバキ科ナツツバキ属
夏、針葉樹林の深い緑の中で白い花弁がひときわ目立ちます。その可憐さに胸がときめいてしまいます。
午後の柔らかい日差しがあふれる森。
ちょっと立ち止まって、優しい時間を感じてみてください。
■急登箇所 |
最後にちょっと頑張って登ります。
のんびりペースで休憩をとりながら約20分くらいです。
登山道が少し荒れているので、足元に気を付けてください。
■山頂 |
独立峰の甑岳からは霧島の山々が見渡せます。
右から「韓国岳」、その左奥に「高千穂峰」、「大幡山」「大幡池」「丸岡山」「夷守岳」
12月下旬撮影
わずかに見える水面が六観音池です。その右上が白鳥山。左下に針葉樹林帯です。
12月下旬撮影
■甑岳火口 |
火口は春夏は緑の湿原、秋冬はススキ野原になります。
深さが30cmもない浅い火口湖(池塘)があり、周辺にモウセンゴケやムラサキミミカキグサ等の湿地植物が自生しています。
トンボやカエルなどを狙って水鳥がやってくることもあります。
外界から閉ざされた、静かで神秘的な場所です。
10月中旬撮影
韓国岳が霧氷に白く染まる頃、甑岳の池塘も白く凍りつきます。
12月下旬撮影
■山頂や火口で見られる花 |
コバノクロヅル(7月下旬)
ニシキギ科クロヅル属
九州南部(霧島山・高隅山・屋久島・市房山)でしか見られない植物です。群生していることが多く、夏に白い花を一斉に咲かせます。冬は葉が落ち、霧氷が美しいです。
ノギラン(7月下旬)
ユリ科ソクシンラン属
ぼんやりしてると踏んでしまいそうなほど、ひっそりと咲いています。自己主張しない優しい色の花に、心まで優しい気持ちになります。
モウセンゴケ(7月下旬)
モウセンゴケ科モウセンゴケ属
TVで見るような食虫植物です。甑岳の火口で通年見ますが、夏頃は小さな白い花をつけます。とても捕虫するようには見えない可憐さです。
アキノキリンソウ(9月下旬)
キク科アキノキリンソウ属
まだまだ夏が盛りの鹿児島の9月、霧島山の中でも甑岳はいち早く涼しくなり、秋を告げる黄金色の花が咲き誇ります。
ヤマラッキョウ(9月下旬)
ユリ科ネギ属
ピンクや薄紫の小さな花がいくつも外に向かって咲く姿は、山野に開いた小さな花火のようです。小さいのに緑や枯草の中でとても目立つ、存在感のある花です。
※( )は写真を撮った時期です。
2011年9月にこの付近で遭難が起きてから、えびのエコミュージアムセンターの職員が、このような目立つ長めのピンクのテープを登山道に沿ってつけています。
一方で、景観を損なうことを嫌った人からこのテープが外されていることもあります。
必ずあるとは限りません。